vol.4 テロワール TERROIR
7月20日発売の雑誌『写真』vol.4「テロワール/ Terroir」では、写真と風土をめぐる関係に着目します。日本各地で制作する写真家たちの作品を通して、現在の日本各地の景観と、風土や文化に対する問題意識や思いを共有します。巻頭には木村伊兵衛写真賞受賞作家の石川竜一の新作とインタビュー、石川直樹と伊藤俊治のコラボレーションなど、今号も見応えある作品、論考、インタビューが満載です!
発行:2023年7月20日
仕様:A5判変形
発行:ふげん社
制作:合同会社PCT
ISBN:978-4-908955-23-5
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巻頭言
雑誌『写真』第四号では、写真と風土をめぐる関係に着目し、テーマを「テロワール」としました。
人はそれぞれの風土を生きています。それは生まれ育った環境や自然、土地の風習などの影響だけではなく、ある時どこかで誰かと出会い、学びの経験や成長の機会、歓喜の瞬間や深い悲しみの時間といったすべてが蓄積され、染み込んでいって一人の人間としての価値観や信念、人格形成に至ります。そしてそれがある土地、ある集団と交錯したときに、その土地固有の文化や風習が見えてくるのではないでしょうか。
日本各地の風景は均質化を辿る一方で、伝統的な風土が完全に失われたわけではありません。日本列島は南北に細長く、山や海に囲まれた豊かな自然環境のもと、人々の暮らしには季節感や自然との共生を重んじる生活文化が未だ色濃く残っています。また日本は地震や台風、火山噴火などの自然災害が多く、その度に土地の文化や風習は更新され複雑に変化しつつも、新しいものと古いものとが独自の特色を持って継承されています。
「テロワール(terroir)」とは、フランス語で「土地の味わい」という意味を持ち、ワインや農産物などの食品文化において、土地の風土がその味や特徴に大きく影響することを意味します。
今号では、日本各地で撮影、制作を続ける写真家たちが捉えた風土をめぐる写真をテロワールとして一望し、風土や環境が彼ら自身にどのように影響を与え、新たな表現となって立ち現れてくるのかを提示します。また彼らの作品を通して、現在の日本各地の景観や、風土や文化に対する問題意識や思いを共有します。
土地の持つ記憶と歴史に写真家たちがどう向き合ってきたのか、ジャンルを超えた執筆陣の論考やコラムのもと、写真と風土の関係を列島規模で俯瞰することで、自分たちが生きる地域、環境に対する理解を深めるきっかけとなるはずです。加速度的に変わりゆく現代においても、我々人間が有機的な生命体である限り、人と土地、人と人とは交感し続け、写真はその土地の手触りを伝える語り部として、重要な役割と魅力を有しています。写真家たちが各地でとらえた写真が、それぞれの味わいとなって読者に届けば幸いです。
編集長・村上仁一
Contents
[口絵 ARTWORKS]
石川竜一 Ishikawa Ryuichi
笹岡啓子 Sasaoka Keiko
田附 勝 Tatsuki Masaru
中井菜央 Nakai Nao
山口聡一郎 Yamaguchi Soichiro
田代一倫 Tashiro Kazutomo
北井一夫 Kitai Kazuo
[LONG ESSAY]
打林 俊/髙橋義隆/鳥原 学/倉石信乃
[CURRENT REVIEW]
飯沢耕太郎「時評 写真評論家の眼」
[INTERVIEW]
・ポリーヌ・ベルマール(聞き手=佐藤正子)
・「挑発関係=中平卓馬×森山大道」(神奈川県立近代美術館 葉山)
・新田 樹「Sakhalin(サハリン)」岡崎ひなた「空蝉ミ種子万里ヲ見タ。」
・座談会:大西みつぐ(写真家)、タカザワケンジ(写真評論家)、山田裕理(東京都写真美術館学芸員)
[REPORT]
・KYOTOGRAPHIE2023 & KG+ 2023 中澤有基インタビュー
[SPECIAL]
伊藤俊治(評論家) × 石川直樹(写真家)
「秋田 その風土と世界性」
[ESSAY]
尾仲浩二「マタタビ日記 2022年初夏 北海道編」
綾 智佳/宇垣美里/大石 始/奥田 敦/唐田えりか/齋藤陽道/トモ・コスガ/野村恵子/橋本倫史/畑中章宏
[MECHANISM]
座談会:港 千尋、出町尚美、速水惟広
[PHOTOBOOK]
早坂大輔(BOOKNERD)
Flying Books
北書店
451ブックス
誠光社
市場の古本屋ウララ
他
[SPECIAL GALLERY]
ふげん社写真賞 第二回 グランプリ 川口 翼